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お知らせ

セミナー開催報告 これからの木質バイオマス事業セミナー~発電・熱利用、成功のポイントを分かりやすくお伝えします~

 平成30年2月5日(月)に郡山市労働福祉会館にて「これからの木質バイオマス事業セミナー ~発電・熱利用、成功のポイントを分かりやすくお伝えします~」を開催しました。全国の木質バイオマス事業の導入事例、課題を共有するとともに、導入のためのノウハウ、県内の木質バイオマス燃料の状況などについて2名の講師に講演していただき、その後、個別相談会を実施しました。47名の方の参加がありました。

 

■講演1 「小規模木質バイオマスガス化発電・熱利用の仕組みと県内動向~」 
講 師  福島大学理工学群共生システム理工学類特任准教授 再生可能エネルギー寄附講座(バイオマス分野) 小井土 賢二 氏

・福島県の森林面積は全国4位(97.5万ha)で、森林率71%、民有林率58.1%多様な樹種が存在する。

・福島県内の森林における空間線量率は避難指示区域を除いて年々低下、2017年3月の平均は2011年と比較し54%減少した。

・バイオマス発電技術の特徴として、一般に2 MW以上の大規模なものは蒸気タービン方式が用いられ規模が大きくなるに従って発電効率が上がることがわかっている。これに対し、発電出力2 MW以下の小規模なものであれば、ガス化あるいはORC(オーガニックランキンサイクル)で発電するのが高効率である。

・ガス化は、小規模の場合はアップドラフト、ダウンドラフトという2つの種類があり、前者はガスが下から上に抜ける、後者はガスが上から下に抜ける構造をしている。ダウンドラフトの方が比較的小規模であり、燃料の含水率に関して制約が厳しい(水分率15%以下)が、タールの発生量が少なく扱いやすい。

・バイオマスガス化の方式には、イメージとして、燃料に対して熱源が火種として内部にあるものを直接式、外部から加熱するものを間接式といい、ガスの発生熱量はそれぞれ900~1,200 kcal/㎥、2,500~3,500 kcal/㎥をと間接式の方が高めになる。

・ガス化の反応経路としては、熱分解と部分酸化、その後に還元反応してガス化や水蒸気改質が起こることが分かっている。

・ガス化熱電併給システムの効率は、以下の式で表される。

① 冷ガス効率(可燃性ガス:B/燃料全熱量:A)×100%=50~70%
② ガスエンジンの発電効率=(発電出力:C/B)×100%=30~40%
③ システムの発電効率=(C/A)×100%=20~30%
④ システムの熱効率=(熱出力:D/A)×100%=40~50%
⑤ システムの総合効率③+④=70~75%となる。

従って熱を効率よく使わないと40~50%だけ総合効率は下がる。

・発電コストの感度分析から、燃料価格が最も重要なパラメーターであり、採算性確保のためには燃料価格の低減が必須。

・県内の事例として、2017年3月に西郷村にある宿泊施設“スパ・ホテルあぶくま”では木質ガス化熱電併給システムが導入された。(発電出力25 kW、熱出力60 kW、総合効率85%、運転時間(予定)8,000 h/年、燃料消費量23 kg/h)

・放射能濃度について、木質ペレット燃料、ガス化残渣、ガスフィルタースス、排ガスについて測定した結果、すべてが基準値以下であった。継続的なサンプリングが必要。

・放射性物質の収支は、ススの割合が多いが、フィルターで除去することができる。次いでガス化残渣が多いが安全に回収できる。

・生産した熱は熱交換器を介して貯湯槽に貯められ、室内風呂のシャワー・給湯、露天風呂の加温に使用している。熱を余すこと無くカスケード利用(多段階利用)することを検討中である。

・普及の課題として次のようなことが挙げられる。

① 燃料が高いこと(国内の価格36~45円/kg程度)
② 木質ペレット材の品質保持と効率的輸送のため専用トラック(バルク車)が必要
③ FIT売電のため系統連系に必要なコンバータ・インバーターの選定。

・棚倉町の木質ペレット工場では年間1千t製造、オーストリアでは6万tと桁が違う。おがくずは塙町の協和木材から調達、松くい虫の被害木や多年草のエリアンサスを混合する検討もしている。木質ペレットにマツを混ぜることで製造効率が向上することがわかっている。

・小型ガス化発電では、以下の点に気をつける。

① 熱利用が重要、また熱需要先に隣接していること(熱需要が望めない場合はガス化発電導入を諦める)。
② 運転実績のある機器を選定する、同一機種複数台が年間7,500時間稼動、1年以上の安定稼動を実証済みであること。
③ メーカーからの説明、数値を自分で確認、分からないときは専門家にチェックを依頼。

福島大学 小井土 賢二
特任順教授 講演の様子
相談会の様子

 

■講演2 「中小規模の木質熱電併給・熱供給の実践例」
講師 サステナジー株式会社 取締役会長 山口 勝洋 氏

・木質バイオマスの熱利用、熱電併給は木材資源の賢い(無駄少なく、無理ない)利用方法である。単純に発電し売ることを目的とすると弊害が起きやすい。エネルギー事業の組み方の中で何の付加価値を作り込むかが重要である。

・エネルギーには質がある。質が高いものはエクセルギー率が高いといい、電気や動力が最も高級、次に化学エネルギー。熱は最も質が低く(使い出がなかなかない)、エネルギーの墓場とも言われる。

・木質エネルギーは、化学エネルギーなので、高級なエネルギーだが、化学エネルギーの中では灯油などの精製物が高く、木質は混合物なので低い。発電など高級なエネルギーに転換するには、アップグレードする必要があり、乾燥させる、粉が出ないチッパーを使う等、手間の投入がいる。

・地域の低レベルな熱需要を高級なエネルギーで賄っていることを改め、地域の低質な熱エネルギー資源をひと手間加えて使えるようにし、有効活用するのが地域熱供給の本質である。木質バイオマス事業の経済効果は、太陽光発電に比べて地域に落ちるお金が大きい。

・熱利用は温度差に注意する。熱は高温から低温にのみに流れる。冷熱用途向けでは、極めて狭い温度帯を大事に使う必要がある。

・木質バイオマスの技術には、有機ランキンサイクル(ORC)、ガス化、蒸気タービンなどがあるが、それぞれ得られる熱と電気の量などが異なる。蒸気タービンは発電のみなので、熱需要に対する貢献はなく、社会的に見れば別途重油等を焚くなどし続ける格好。熱需要に合わせて技術も検討すべき。

・ガス化の事業性は、発電効率と稼働率である。発電効率は、数百kW級であれば、29、30%くらい、数十kW程度であれば21%を超えるものもある状況。稼働率は85~90%であれば事業計画上は採算に乗せうる範囲になるが、経験上、70%台だと事業としては厳しい。

・日本は材料代と工事費が欧米に比べて高い。地域ごとに戦略を立てながら状況を打破していく。まずは第三セクターの温泉など小規模なところに導入し、地元工事体制のモデルを作る。次に面的にインフラを普及させていく。燃料(製材、端材など)、熱需要が地域でどのくらいあるか調べる。地域の林業システムを組み立てていく。

(紫波町の事例について)

・紫波町では木質バイオマス事業に取り組むため「間伐材運び隊」を結成。1つ仕組みを作ると取り組みが広がっていく。

・紫波町の庁舎を移転する機会に木質ボイラーを導入、町役場庁舎、体育館、ホテル、住宅40軒、保育園など対し、熱・冷熱を供給。面的に事業を行うことで、個々の熱ユーザーでは難しい木質バイオマス利用を面的にまとめてできた。

・紫波町では、材の供給、熱利用側ともに町が大きく関与し、熱供給は民間の事業主体が担っている。地元の信用金庫が融資し、環境省が設備と配管に補助している。事業には約3年かかった。

・生木(水分50%)換算で1,500t/年を消費する。町の森林率は50%くらいであるが、問題なく供給できる。チップは水分30%程度に乾燥させて納入されている。

・町が補助を使い購入した機械などを貸与し、農林公社がチップの供給を受託している。長期間低価格で、安定的に供給することにも町が関与している。一緒になってひとつのシステムを導入することが重要。

・計画段階で、どの施設がどのくらい熱を利用するかを分析する。放熱ロスも考慮する。熱供給義務があるので、バックアップとしてガスボイラーやヒートポンプチラーを備えている。

・事業の収支計画を見ると、熱だけで採算を立てるのは(石油価格が低いと)難しく、熱電併給では売電収入がポイントになっている。

・木質ボイラーは清掃が必要であり、その時間は稼働できないので、稼働率をよく検討する必要がある。(木質ガス化ではなおさら)

・住宅への熱供給は、使用量等に応じて料金プランを設定し、使いやすいようにしている。設備更新費も考慮し、他の熱源よりも少し優位になるように料金を設定している。ただし、熱供給は地区の住宅や商業施設の建築主が必ず使うという政策方針にはし損ねている。

(気仙沼市の事業について)

・気仙沼の事業では、400kW、2台の発電とともに配管接続した2つの温泉ホテルに熱を供給。暖房・冷房・給湯・温泉加温などに使っていた重油・灯油を置き換えた。

・8,000t/年(50%水分換算)を収集しチップ化、森林組合2つと市内の民間素材生産者と契約。市外業者ともスポット契約し、必要なときは材を追加してもらう。加えて個人が自伐林業で間伐材を持ち込む。半分は地域通貨で買い取るという仕組み。百数十名が研修を受けて卒業している。実際に数十名の方が材を出してくれている。

・チップは水分10%、現場型の計測機では計測限界以下。粉が出ないことが重要。材には使えない部分が出ることもあり、歩留まりで損が出ないようにすることにも注意する。

サステナジー株式会社 山口 勝洋
取締役会長 講演の様子

相談会の様子会場の様子