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セミナー開催報告 これからの太陽光発電保守点検セミナー~住宅用・小規模太陽光発電のメンテナンス~
平成29年11月20日(月)コラッセふくしまにて「これからの太陽光発電保守点検セミナー~住宅用・小規模太陽光発電のメンテナンス~」を開催しました。これからの太陽光発電維持管理について、産業用太陽光発電システムのトラブル事例について講演していただき、その後、個別相談会を実施しました。企業や行政の方など38名の参加がありました。
■講演1 「あなたは健全な発電オーナーですか? ~これからの太陽光発電維持管理~」
講師 NPO法人太陽光発電所ネットワーク 代表理事 都筑 建 氏
アドバイザー NPO法人太陽光発電所ネットワーク 事務局長 伊藤 麻紀 氏
・3.11後からFIT法が始まり、当時とは様相が変わっている。以前は、太陽光発電は良いものだという風潮があったが今はそうとは言えない。太陽光発電がメンテナンスフリーと言われていたこともあるが、太陽光パネルの不良が多いことが明らかになっている。
・環境破壊、光害、水害、自治体によっては厳しい条例が出ているところもある、予防保全が重要、保守メンテナンスのガイドラインが出ている。
・不具合の兆候を見つけるのが重要で、目視でもパネルの電極が茶色に変色している場合はすぐ交換するなどの対応が重要。ほったらかしにしないで消費者、発電事業者も賢くなる必要がある。
・住宅用の太陽光発電は儲かるものでないため、メンテナンスにお金をかけられるわけではない、また屋根の上にあるシステムを点検するのも容易ではない。そこでPVネットでは正常な発電をしているかを調べる「PV健康診断」を行っている。①実際の発電量と②推定発電量(毎月ごとの日射データと設置容量、傾斜角度などから算出)の比較で発電性能を検証する。①と②の乖離が大きい場合、検証が必要である。
・乖離度は、乖離度=100-(実際の発電量÷推定発電量)×100で求められ、±10%は正常範囲内としている。
・「PVカルテ」としてシステムの情報(パネルやPCSのメーカー、型式、容量、設置角度)をまとめている。発電量を検証するのに重要なデータであるが、例えばシステムを設置した人がいなくなった時に残された家族のためにもワンペーパーにまとめておくことを強くお勧めする。
・太陽光パネルに影がかかるのも問題で、発電量が下がるだけでなくパネルの故障につながる、日陰になっていれば設置位置をかえるなど対策が必要。
・陰になり発電しない部分があるとバイパスダイオードが電流を迂回させるが、バイパスダイオードによる電流の迂回は一時的な機能であるため、壊れやすく、壊れた場合、異常に過熱されることがあり酷いものは100℃近く高温になることもあり危険である。
・その他、配線が繋がっていなかったり、PCSの表示機能が壊れていたり様々なトラブルがある。唸りがするなどの異音や異臭がないか確認する。
・システム点検費用は不具合が見つからなければ有償になる場合があるなど業者によって異なる。施工の不具合は設置業者、機器の不具合はメーカーの保証になる。
・太陽光発電システムでは、停電・災害時の自立運転コンセントが使える場合があるが、いざという時にスムーズに使用できるよう、事前に試しておくべきである。
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■講演2
「産業用太陽光発電システムのトラブル事例~インピーダンス測定による故障パネルの故障特定~」
講師 株式会社アイテス 製品開発部 営業課 藤本 秀樹 氏
・発電事業者ができる点検は遠隔監視で日々の発電量をチェック(PCSのモニターでもチェック可能)、パネルの目視点検も重要、割れがないか、表面に影や汚れがないか、パネルの裏側も変色していないかチェックする。
・PCSの操作、例えばテスターなどで電圧測定をしてはいけない、誤操作によって復旧できなくなる(施工業者の保証(瑕疵保証)がなくなる)、感電することがあるため、必ず作業者(施工業者、電気主任技術者、電気保安協会O&M専門業者など)に相談・依頼する。
・保守点検はお金がかかるが、不良パネルを交換しないことなどによって発電量が得られないのも投資回収にならない、点検費用は安い、高いで判断するのではなく、実施する点検内容をよく聞いて業者を選定することが重要。
・稼働年数別で見ると竣工から1年以内に故障であることが分かったのが半数弱ある、竣工検査では天候によって変化する電圧測定しかしていない場合が多く、不良パネルを見過ごしている可能性がある。
・太陽光パネルは大きく分けて結晶系と薄膜系(主にソーラーフロンティア)があり薄膜系も10%を占めているが、点検の手法が確立されていない。
・シリコン結晶型の太陽光パネルは太陽電池セルを直列接続しているが、この構造では半田が使用されているため、組成の違う金属が熱などによって伸縮することで耐久性の弱点となり故障の原因となっている。半田の接合不良が発生するとインターコネクタ(内部配線)が高抵抗となり熱を持ち焦げる場合がある。野建ての太陽光発電所の場合、枯れ草などの可燃物があると火災につながる可能性があるので危険。
・太陽光パネルの裏面にあるジャンクションボックスの中にバイパスダイオード(影や断線を避けるための迂回路)があるが、落雷や経年劣化でバイパスダイオードショートを起こすことがある。
・パネルの出力保証は概ね10年で81%、20年で72%、クラスタ故障の場合67%になる。この場合パネルは交換対象になる。(クラスタはパネルの短辺の6列のうち2列ずつを指す)
・インピーダンス測定によってクラスタ故障を見つけることができる。開放電圧を測定し、ストリングの内部の直列抵抗(インピーダンス)を測定する。高抵抗のものは不良である。曇り空であれば十分測定できる。